第2回 去勢と避妊
文京区の石井動物病院の院長石井貴先生にお話を伺いました。


毎日のように沢山のわんちゃんやネコちゃんが処分されています。
その大半は1歳未満の子犬や子猫だといわれています。
この悲惨な現状は、不用意な出産を抑えることで容易に減らすことができるのではでいでしょうか?
一番の方法は去勢や避妊処置。
それは手術で生殖器(メス:卵巣および子宮 オス:精巣)を取り去る事で繁殖を防止するという方法です。


1. 去勢・避妊は不自然で残酷なことか?
よく、「去勢や不妊手術なんて必要ない、自然のままがよい」や「人間の都合で健康体にメスを入れたくない」
という飼い主さんの言葉をよく耳にします。
すでに、動物を飼いならしてきた過程で、犬も猫も自然に人を必要とするようになっています。
この時点で彼らの野生の血を奪い去り、自然の法則を適用することは出来なくなったとおもいます。
家庭動物として生活していることは、すでに自然ではないのです。

また、「去勢・避妊なんて残酷すぎる・・」とお考えの飼い主さんもいらいしゃいます。
彼らの性の成熟は自然なものです。同時に発情・生殖行動といった性行動も当然みられるようになります。
この子孫存続の本能がその目的を達せられないとき、放浪、闘争、攻撃、無駄吠え、遠吠えなどの
好ましくない行動を駆り立てるのです。
彼らの子孫存続本能は、人間同士の愛情表現とは全く異なるものです。
去勢・避妊された動物は、このような本能が取り除かれるわけですから、周期的にやってくる繁殖意欲に苦しまずに
すむわけです。                                           

「家のわんちゃんはかわいいから、子供がほしい」という飼い主さんもおいでになります。
彼らの出産頭数は、1,2頭ではありません。多いときには十何頭という子供が生まれます。
全て自分で飼うのなら別ですが、里親が見つからないときはどうするのでしょうか?
こういった里親が見つからない犬・ネコ達が年間数万頭も処分されたり、実験用の動物となってしまうのが現状です。
「一回ぐらい出産を体験させてあげたい」とお考えの飼い主さんへ それは人間の身勝手な思い込みにすぎません。
一回発情を迎え出産を経験した動物達はその後、暫くの間周期的にやって来る性欲にとても苦しむのですよ。

発情し、本能でいっぱいになっている犬を鎖でつないでいるというのは、人間には理解できないほどの
ストレスが溜まっているそうです。 またオス犬は発情中のメス犬の匂いを嗅げば、その事で頭が一杯になり、
飼い主がコントロールできないこともあります
こういった多大なストレスが、いろんな問題行動を起こす要因であることは確かです。
犬が悪いのではなく、動物を飼っている以上彼らの本能は理解すべきです。こういった彼らの本能からくる
多大なストレスを放置しておくほうが残酷で身勝手な人間の思い込みではないでしょうか。



2. 手術すると肥満になる?
よく手術をすると太って動きが鈍くなるやホルモンのバランスが崩れて太ると言われる飼い主さんがいますが、
手術と肥満との間に定説な因果関係はないようです。
(一説に血中エストラキジオール濃度の低下により、血中脂肪酸のエステル化および組織への沈着化の
抑制作用が阻害され肥満を誘発するといわれています)

手術によって性欲がなくなったわけですからその反動で食欲が旺盛になってしまう場合もあるかもしれません。
たくさん食べれば飼い主さんは「健康だわ」と勝手に思いこみ、ついつい多く与えてしまうのでしょう。
野生の頃の習性は当然残っています。「食べられるときに食べられるだけ食べる」という習性です。
野生の頃の彼らは、いつも食料を得られるわけではないですからそういった習性があります。
家庭で生活している動物は食べられないときなどないのですから、欲しがるまま与えてしまうと当然太って
しまいますよね。しかし、それは適切な運動や食事のコントロールで、体重をうまく調整することは可能です。
去勢・避妊していないのに、太っている動物はたくさんいます。
体重の管理も飼い主さんには大切な責任ですよね。


3. 去勢・避妊のメリット
去勢避妊は、特にオス犬にはその行動に目立った変化が見られます。
野性的な部分が少なくなりますので、とても従順で穏やかな性格になります。
オスでは問題行動・メスでは病気(乳腺腫瘍や子宮蓄膿症)が激減します。

オス犬の場合
・自己主張が少なくなり性格が穏やかになります。
・放浪したり、マウンティングやマーキングが減少します。
・子孫存続本能がなくなりますので、ストレスが激減し、攻撃性が減少します。
・生殖器(精巣)を取り除いてしまうので、精巣腫瘍や睾丸系のガン、また前立腺、肛門周囲線の病気が激減します。
・糞尿の臭いが少なくなります。

メス犬の場合
・乳腺腫瘍になりにくくなります
・子宮を全摘した場合、子宮蓄膿症になることはありません
・オス犬などが集まらなくなります
・分泌物で周囲を汚さなくなります

特筆すべきは、乳腺腫瘍の発生率と避妊手術の関係です。
・1度も発情していない時に避妊手術をすると、発生率は0.5%と大変低く
・1回の発情後に避妊手術をすると、発生率は8%とやや高くなります。
・2回の発情を経験している子に避妊手術をすると発生率は26%と高くなりますが、それでも避妊していない成犬と
比較するとその発生率は1/3以下です。

犬の乳腺腫瘍は、卵巣ホルモンと深く関係しているそうですから、避妊手術をすることによってその発生率を
抑えることができるそうです。
犬種にもよるそうですが、老齢期のメス犬の約4頭に1頭の割合でガンが発生しているようです。


4.去勢・避妊の時期
個々によって若干の差はあるそうですが、メスの場合6ヶ月を過ぎたら発情期にすぐ入る子もいるようですので
生後5〜6ヶ月をすぎたら、かかりつけの獣医さんと十分に相談してください。



あとがき

子供を作れない身体にしてしまう、人間にそんな権利があるのか?という意見ももちろんあります。
しかし責任を負いきれない子供を産ませて、結果的に殺処分されているのが現状です。
不妊させないでいる事もまたそんな権利があるのか?と思ってしまいます。

日本でも毎日のように無責任な飼い主のせいで多くのわんちゃんや猫ちゃんが処分されています
FunnyDogを設立した趣旨もこういった身勝手な人間のために、不幸な一生を送る動物たちを1頭でも
救いたい!そういった気持ちをもった仲間が集まってできたグループです。

里親に引き取られたり,新しい飼い主にめぐり合えるのはほんの一握りで、ほとんどの犬や猫は処分させられたり、
実験用に引き取られたりと悲しい結末を迎えています。

プロの繁殖家でないのなら、きちんと去勢・避妊手術をするべきだと思います。
素人がむやみに繁殖させても、きっと良いことはありませんよ。
繁殖はとても難しく、いろんな知識がいることだと思います。
そうでなくても我が家のキャバリアという犬種は「僧帽弁閉鎖不全」という病魔におかされています。
これは遺伝的疾患だと言われています。小型犬なのに10年に満たない寿命だといわれています。
キャバリア以外にも、股関節やてんかんや突発性攻撃などなど遺伝的疾患のある犬種はとても多いのです。

「病気でもないのに手術なんて費用がかかるんでしょう」という方は多いでしょうが、手術によって得られる利点
も多く、手術さえしていれば、ならなくてもよい病気ともおさらばできます。
老齢犬になって、ガンなどに冒されてしまう事の方がよっぽど費用がかかると思います。

「麻酔事故で死んじゃうこともあるでしょう」という方もいらっしゃいますが、最近はほとんどないそうです。
信頼しているかかりつけの獣医さんで処置してもらうわけですから、それは獣医さんを信頼していない
ということだと思います。

だけど、誤解しないでください。
去勢・避妊は「問題行動」の対処法ではありません。
去勢したのに…直らないというのは責任転換しているだけで、去勢・避妊でこれだけの問題をとり省いたので
あとは飼い主さんが「良いリーダー」になる努力だけです。
我が家では、マウンティングは下の女の子が上の男の子にしています。これは力関係ですね。
かわいいペットのこともっと知ってください。それが飼い主さんとペットのより良い関係を生むのだと思います。


最後になりましたが、
石井先生には、お忙しいところ貴重なお時間を割いていただき、とてもご親切に丁寧に
いろいろとお話をしてくださいました。ありがとうございました。
ご協力いただきました石井先生には感謝の念に耐えません。

なにかご感想やご意見ございましたら、FunnyのBBSやメールで送ってください。
わんちゃんと飼い主さんの幸せな毎日のために….



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